宴のあと




                     素形 あすか


 あったかい…
さらに良く知ったいい香りもほのかに漂ってくる中、意識がぼんやりと目覚めていく。

何かが頬にはらはらと落ちてきた感触の後、それを優しく取り除いていく指にはっきりと目覚めた一騎は、見上げる形で総士の顔がある事に驚いた。

「あ、すまん。起こしたか?」
「いや…大丈夫。俺寝てたのか…;」

昨日は花見弁当のリクエストのおかげで徹夜をするハメになった為、いつの間にか眠ってしまったらしい。
納得した一騎は改めて自分の今の体制に気付いてさらにびっくりする。
膝枕…しかもちゃんと寒くないように上着も掛けられていて…

(ありがと総士〜!)

一騎はちょっぴり幸せな気分をかみしめた。

「一騎…おなか減ってないか?」
「え?」
言われてみれば作るだけ作って、座ったとたん苦労が終わった気がして一気に意識が遠のいたような…。

「何も食べずに寝てたから、お前の分取ってある…食べるか?」
「あぁ…」

重箱の中には一通りのおかずが残されていて、また一騎は幸せな気持ちになる。
膝枕から起きるのは少し残念な気もしたが、せっかくとっておいてくれたのだからありがたく頂く事にする。
「ほら、お茶だ。熱いから気をつけろよ。」
「ん、ありがとな。」
満開の花の下、幸せな時間はのんびりと過ぎていく。


「あ、一騎起きたの〜?」
ぱたぱたと乙姫がかけてくる。
寝ている間に近くを散歩してきたのだろう。
その手には綺麗な黄色の花飾りが握られていた。

「前、芹ちゃんが教えてくれたの。」
嬉しそうに微笑んで一騎の頭にそれを乗せる。
「はい、お弁当のお礼だよ。とっても美味しかった!ありがとね一騎!」
そう言って頬にちゅっ、とキスをした。
「乙姫!」
総士の複雑なトーンを含んだ声が上がる。

「とっても嬉しかった時にするお礼なんだって♪」
「だからって…」
総士の声は益々なんとも言えない物になっていく。
「変なの、総士…あ! 判った! あたしの方が先に一騎にお礼しちゃったからいけなかったのかな? そうでしょ?」
「ばっ! ち、違うっ!」
総士の顔は真っ赤で声はさらに裏返っていく。 当の一騎は間に挟まれ小さくなって兄妹ゲンカ(?)を聞くハメになった。

「じゃあ総士も一緒に一騎にお礼しようよ♪ねっ!」

総士はまだ何やらもごもごと小さくつぶやいていたが、乙姫にうながされて一騎のすぐ横に座らされる。
「じゃあ、総士はそっちのほっぺね♪ ありがと一騎!」

両頬に今度は同時に柔らかい感触がきて、なんともいえない気持ちが込み上げてきた。
(めちゃくちゃ幸せかも〜:涙)

美味しいと喜んでもらえた上にこんな可愛いお礼までもらえて徹夜の疲れもどこかに飛んでいってしまった。
黄色の花冠を被ってピンクの花弁が舞い散る中、それ以上の素敵な花を両脇に幸せな時間をしばし堪能した一騎だった。






END

 








2005/04/16
拍手の、花見ネタの話を読んだあすかちゃんが、「あまりに一騎が可哀想だから」と、
書いて送ってくれました(笑)
一騎、救済された?(笑)
両方からのチューは、スマスマかな? そんなのの影響でやりたかったとか。
甘いですー(笑) ありがとう、あすかちゃんvvv