かぼちゃの恩返し




                    素形 あすか


 
 裏庭に植えていたかぼちゃが萎れかかっていたのを、とてもがっかりしていた総士の姿についほだされた一騎は、それを日当りの良い庭に植え直す事にした。
きっと枯れてしまうだろうが、総士の嬉しそうな顔に、やって良かったなぁと思う。



その日の晩、何やらこそこそと動く気配に二人は目を覚ました。

「誰だっ!?」
その声に、びくりと止まった物体をよくよく見た一騎は、言葉を、一瞬、無くした。
そこに居たのは緑の帽子に黄色い服を着た小人だった。

『こんばんは☆ あの…なにもしないんで、どならないでもらえませんか?』
半分涙目になっている小人を見て総士が謝る。
「すまない。びっくりしたものだから。で、キミは?」
差し出された総士の手のひらにちょこんと乗ったそれは信じられない事を言った。

『ぼくは、きょう、たすけてもらったかぼちゃのこびとです☆ もうすこしでかれてしまうところをたすけてもらってありがとうございました☆』
ぷにぷにとしたかぼちゃの小人はニコニコ笑っている。

「…可愛い」
ぽつりとつぶやく総士を尻目に、一騎は現実逃避をはかっていた。
(こっ、これはきっと夢だっ! そうに違いないっ!)

さらに小人は言った。
『このたすけてもらったごおんは、いっしょうわすれません☆ このうえはぜひ、りっぱにみのっておふたりにおいしくたべてもらえるようにがんばります☆
では、またにわでおあいしましょう☆』
そう言うなりぷにぷにしたかぼちゃの小人は消えた。

「一騎。植え替えしようと言ってくれてありがとう。明日の庭が楽しみだな♪」

何故そこまで普通の反応が返せるのか一騎にはさっぱり理解出来なかった。
(なんでヘンだとか思わないんだよ〜、総士〜!)

そんな心の叫びを知ってか知らずか、そのまま夜ふけてゆき、朝になった。

日の光で起きた一騎は、やはり昨日のは夢だったんだ〜などと思った矢先。
総士の庭から呼ぶ声に慌てて窓から下を見た。

「うっわぁぁ〜っ!」
庭は一夜にしてかぼちゃ畑と化していた。その真ん中でにこやかに総士が立っている。
「一騎〜、良かったな〜!
当分かぼちゃには困らないぞ〜」
(嘘だ、誰か嘘だと言ってくれえぇぇ〜っ!)


ぱっと意識が上がり、一騎は目覚めた。隣には総士がまだ気持ち良さそうに眠っている。
「…良かった…夢か…」
起きた一騎に気付いたのか、総士も続けて目を覚ます。
「おはよ…かずき…ゆうべかぼちゃの夢を見たんだ…」
ギクリとする一騎。
「あのな…こびとが…」
それ以上言わせないとばかりにそのまま総士の唇を奪う。

庭を見るのが恐ろしい気がする。
この今も夢なのかも…。
良く判らないまま、朝はおだやかに過ぎていった。


 
 



 









                     END

John di ghisinsei http://yokohama.cool.ne.jp/gisinsei1129/

2005/05/25
拍手のかぼちゃネタから。
思いつきで携帯に送ってくれたものですが、
面白かったもので(笑)
UPする、といったら
「ひえええぇ〜!」と(笑)